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militarysniperpinfall 2nd Full Album [tening] 2018.08.01.wed In Stores Code: PZCA-83 / Price: 2,500yen(+tax)

MV: プライドアンドグローリー

RELEASE INTERVIEW!!

Interview Vol.03

  •   Vol.2

-- そして、歌詞も独特だと感じました。歌詞を読むと、カタカナがほとんど無く、しっかりとした日本語で綴られています。歌う為の詞というよりも、詞を歌ってる印象だったんですよね。

西谷 言葉の選び方は凄く気を遣ってますね。それこそ、『suite』のころは言葉の響きやカッコよさでチョイスしてた部分もあるんですけど、意外とそういうのって歌っても伝わらなかったりするじゃないですか。もちろん、今回もメロディーとの兼ね合いでそういったアプローチをした部分もありますが、普段使ってる言葉を極力使っていきたいというのが自分の中にあるんです。ホントにこうやって喋ってる感じがそのまま曲になるよう、書くときは意識してますね。

-- 言葉として、相手に突きつけるような強い表現も多いのかなと。そのあたりはどう考えていますか?

西谷 日本語の面白いところで、ひとつ伝えたいことがあったとして、表現の仕方がたくさんありますよね。その中でいちばんまっすぐに届く言葉はどれかを考え、加えて曲の雰囲気や口あたりで選ぶことが多いです。普段の僕はあんまりしない表現だけど、口あたりがいいし、より表現して響くからこの言葉を使おうと決めたりもするので。

-- アンチテーゼとも言えるようなメッセージもありますよね。

西谷 でも、僕は全部ラブソングとして書いてるんですよ。

-- たしかに、愛を感じる歌詞もありますけど、すべてそうなんですか?

西谷 そうですね。愛にもいろんな形があって。ラブソングと言われたら、「君が好きだ」みたいなモノを想像しがちだけど、それだけが愛じゃないし。

-- しかし、どうしてラブソングなんしょうか?

西谷 いちばん日常に近いからだと思います。歌詞は何をどう表現してもいいと思うし、非現実的なことを書く人もたくさんいますけど、それは自分の中ではしっくりこないんですよね。

-- 新作にも収録された「夢のある話」の中で、"年を取ったからかな 少し前の俺なら照れ臭くて顔を隠したくなるような言葉達も 今なら前を見て言える 君の目を見て伝える事が出来る"という歌詞もありますが、昔は書けなかったことも?

西谷 やっぱり、若いときはカッコつけたがるし。先ほども少しお話しましたけど、『suite』では形で選んでた言葉もあったし、ストレートに言えばいいのにあえて難しくしてたところもあったんです。でも、考えてみればより届くのは、より響くのは生きてて馴染みのある言葉だと思うし。昔はそれがこっ恥ずかしかったけど、今はいいじゃんって素直に言えるんですよね。

LARRY 日本語が日本語として機能してるというかなんというか。 きちんと風景が見えてくる歌詞になっているのは素敵だと思います。 勿論言葉を記号的に使うのも面白いですしどれが良いとかではないんですが。 さらに突き詰めていくとこのバンドでしかできないところまで行くのではないかと勝手に期待しています(笑)。

-- そういった変化は自然な流れだったんでしょうか?

西谷 自然ではあったと思いますが……『suite』を出して、叙情派ハードコアみたいなイメージがついたことに対して、それを払拭したいというのもあったかもしれないです。不平不満を訴えたいだけじゃないのに、周りからそう見られてるような気もして。

-- シリアスなアンチテーゼを投げつけるバンドだとカテゴライズされたような。

西谷 もちろん、そういう部分もあるんですけど、それだけをやりたくて音楽をやってるわけじゃないし。それはちょっとマズいなと思ったんですよね。当時、ライヴのスタイルとしてもちょっと尖ってたところもあったり、力が入りすぎて常に眉間にシワが寄ってた感じもあったんで、改めて考えてみると、自分で作り上げちゃったイメージを自分でぶっ壊していく、というところから言葉選びも変わったのかも。

-- より自然体になったバンドが作り上げた新作の中で、あえて軸を選ぶとするならばどの曲になりますか?

西谷 そこなんですよね、難しいのが。たぶん、(収録曲に)統一性がないと思うんです。いい意味なのか、悪い意味なのかは聴いてくれた人が判断してくれればいいと思うんですけど、それが僕らの色というか。何かしらの統一性を求めちゃうと、やってる僕ら自身が楽しくなくなっちゃうし。プレイしてても飽きがこないし、いろんなことをやりたいんです。でも、どの曲も「やっぱり、ミリタリーだな」というのは出せてると思ってます。

三希 なので、次はレゲエでもやってみようかみたいな。

-- えっ、レゲエですか!?

三希 いや、MV撮影のときに、そんなことを冗談交じりで話してたんです(笑)。

-- あっ、なるほど(笑)。ちなみにMVはどの曲で撮られたんですか?

西谷 MVは「プライドアンドグローリー」ですね。ラリーさんとも相談して、この曲がいいんじゃないかと。僕らなりのエッジ感とそうじゃない部分の表現もあり、バンドのカラーが詰まってると思うんです。自分たちじゃわからない部分もあるけど、外側から見たミリタリーのイメージがしっかり出てるのがこの曲かなと。

三希 客観的な目線無しで、ウチら4人だけで考えたら選ばなかったかもしれないですね。

-- では、他に扉となるような曲を選ぶとするならば?

今井 そういう存在であれば「夢のある話」とか。

三希 この曲はそうなるんじゃないかなと。

-- 作品の最後を締めくくるフィナーレ感もあり、これからの意思表示もこめられた曲ですね。

西谷 一度、フリーサンプラーとしてこの曲を配布したことがあって、反応が凄く良かったんです。作品の中でも特に色が違う曲だと思うんですけど、これは狙って作ったところもあり。僕らは内向きというか、自分たちを掘り下げるような曲作りをしてるけど、もうちょっと外へ向けた曲をやってみようと考えたんです。で、そのイメージを(松村)鐵太郎に伝えたら、いいコード感を提案してくれて。

-- また、作品の始まりは「イントロダクション」になってますが、これは当初からの予定でした?

西谷 そうですね。ライヴではいつも「イントロダクション」を1曲目にやってて。いつも観てくれる人は「やっぱり、ミリタリーはこの曲からだよね」と思うだろうし、このタイミングで出会った人には「いつもこうやってライヴをやってるんだよ」と知って欲しかったんです。

-- かなり曲の振り幅もありますが、自分たちでいちばん攻撃的だと感じる曲はどれになりますか?

西谷 「アノテコノテ」か「イリーガルギミック」ですかね。

三希 私的には「アノテコノテ」かな~。

-- 「アノテコノテ」は抜群の疾走感と共に複雑なフレーズが絡み合う曲ですが、ミリタリーとしてはショートチューンな扱い?

西谷 そうっすね。

今井 ショートチューンのつもりで制作しました、たしかに。

-- 反対に、優しさやメロディアスな部分が強く出た曲というと?

西谷 やっぱり、「夢のある話」はそうだし、あと「還るべき場所」とか。

西谷 あと、「続・芥子の花咲く頃あの丘で」もそういう存在かな。

-- どういった反響が起こるのか、楽しみですよね。聴く人によって、いろんな感じ方ができる作品でしょうし。

西谷 そうですね。賛否、どっちの反響も楽しみなんですよ。例え、否定的な意見だとしても、それはそれで受け止めたいし。いちばん怖いのは無ですからね。

-- この『tening』というタイトルは"テニング"と読めばいいんですか?

西谷 はい、そうですね。造語になりますが、意味合いを細かく表記するならば"ten・ing"。10周年の"ten"に、今まさに進行形であるということで"ing"をつけました。

-- この節目にいい作品を完成させて、まだまだバンドは前を向いて進んでいくと。

西谷 これからもいい出会いをしていきたいし、今までやらなかったようなことも作品として取り組んでいきたい。自分たちのフィルターを通してですけど、どんどん挑戦していきたいんですよ。

-- バンド的にNGなことは何かあります?

西谷 特にNGはないですね。

-- 先ほど、冗談交じりとはいえレゲエみたいな話もありましたけど。

西谷 その流れで話すのならば、レゲエみたく、圧倒的にカテゴライズされてるモノってあるじゃないですか。それをウチが表現するとどうなるんだろうっていう面白さは感じるし、やってみたいなとも思いますよね。ルーツミュージックとして裏打ちでやるのではなく、僕らなりのレゲエはどうなるのか。そういったところでは、レゲエに限らず、まだまだ挑戦してないことはあると思う。1曲としてまとめるんじゃなくて、1フレーズのテイストとしてでもいいし、やっていきたいところですよね。

LARRY militarysniperpinfallは長尺の曲が得意という印象を持ってたので、今回の推し曲(プライドアンドグローリー)はメンバー的にもどうなのかなというところもあったようですが、せっかく一緒にさせてもらうんだからあえて違う面、新しい側面も見せたいなという思いがありプライドアンドグローリーでMVを撮ってもらいました。 正直言うとただただ好きなだけなんですけどね。プロデューサーの特権です(笑)。 一曲中で様々な表情を持つミリタリーの楽曲ですが、曲単位でもいろんな表情を見せてくれると面白いと思います。

-- リリース後のツアーはどういった予定になってますか?

西谷 今、まさに組んでる最中ではありますが、まず9月30日に立川BABELで初日を迎えて、来年5月までやっていく予定です。みんな基本的に社会人をやりながらバンドをやってるんで、仕事の合間を縫う形にはなるんですけど、東京近郊であれば平日も含めて、月に6本ぐらいのペースでいければなと。

-- 出ずっぱりではないとはいえ、かなりの本数になりそうですね。

西谷 結構やりますね。各地でイベントを組んでくれる人もいるし、受け入れてくれるところも多いんです。それは今まで自分たちがやってきたことの積み重ねの延長だと思うんで、ホントにありがたいです。6年近くも新作を出してないのに「是非、来て欲しい!」と言ってくれるのはめちゃくちゃ嬉しいし。感謝しかないですね、今。

-- そこでまた新たな出会いもあるでしょうしね。

西谷 もう、ホントにいろんなバンドや人に出会いたいです。通じ合ってるバンドと一緒にやるのも当然楽しいんですけど、初めて共演するバンドがいればいるほど、楽しみも増えるというか。未知数のバンドとやるときは、やっぱりワクワクしますから。

-- 気の早い話かもしれませんが、次回作へ向けてペースは上げようと考えていますか?

今井 たしかに、また6年ぐらい空くっていうのは長いですからね。

西谷 そのへんについてはラリーさんとも相談することではありますが、曲はなんとなくいじり始めてはいるし、何とかやっていこうかなと。

-- バンドのペースは崩さずに、ということですよね。

西谷 でも、どうしようかな、って感じもあるんです。これまで、しっかりと目標を自分たちで決めて、それを遂行しようとしたことはあるんですけど、どこかで脱線してて。だからこそ、そういうのもバンドの挑戦としてやってみるのもアリなのかなって。それがマストになると窮屈でダメなんでしょうけど、ワクワク感を持ってそこと向き合えれば、制作としても進むだろうし、モチベーションもより高くなるはずだから。

Interview By ヤコウリュウジ

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Interview Vol.02

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-- この新作を聴かせていただいて、いちばん最初に感じたのがアプローチの多彩さだったんです。いわゆる叙情派ハードコアの匂いはありますけど、メロディアスに歌い上げたり、ポエトリーリーディングのように語ったり、サウンドのニュアンスとしても多種多様で曲展開も自由に切り替わる。普通だったら、もうちょっと何かに偏ると思うんですよね。

西谷 もともと、僕たちはハードコアバンドだとかメタルバンドだとか、そういったカテゴライズを特にしたかった訳でもないし。たまたまこの4人が曲を作ったら、こういう楽曲になったというか。12年に1stフルアルバム『suite』を出したとき、周りからはエモーショナル・ハードコアや叙情派ハードコアと言われたりもしたんですけど、僕らとしては「へ~、そうなんだ」みたいな。それに、音楽全般ってルーツミュージックな部分があるじゃないですか。特に、メロディックやハードコアはルーツを重んじるだろうし。僕らにもそういう部分はあるし、先人がやってきたことに対してリスペクトはするんですけど、そこだけにフォーカスを当てることはしたくないんです。偉大なモノを残してくれたんだったら、そこから自分たちなりの音楽を作りたい。あえて口に出してるわけじゃないけど、みんな無意識のうちにそうなってるというか。

三希 だから、自由にやってると言われたら「なるほど」とは思うんですけど、結構それぞれ頑固ではあったりするんですよ。

-- 既存のフォーマットに落とし込むことを自然と拒んでるような。

西谷 あと、意外と我が強いメンバーなんで、この4人の中だとキッズ感があるのが僕だけなんです。それこそ、僕はいちばんルーツミュージックに従いたくなるけど、メンバーが「それじゃ、面白くないっすよ」と歯止めをかけるところもあって。

三希 だって、(納得しないと今井は)叩いてくれないんですよ。

西谷 そうそう。「やっても面白くないんで意味がないっす」ってね(笑)。

-- そんなこと言うんですか?(笑)

今井 そこまでは言わないと思うけど……叩くときのテンションに違いは出てますね(笑)。

西谷 でも、この4人が納得する道を探すのは楽しいし、「これがいいんじゃないか?」と合わせてるときは凄く気持ちいい。もちろん、それがすべていいモノとして仕上がるわけではないんですけど。

-- 曲の発端は松村さんがバンドへ持ち込むんですよね。

西谷 そうですね。(松村)鐵太郎が自分のアイデアを提案してくれる場合と、僕が凄く抽象的な感じでイメージを伝えて、それを彼なりの解釈で形にしたモノを持ち込んでくれる場合の2パターンがあります。

-- 松村さんがバンドへ提案するときは、全体像まで作り込んでいくんですか?

松村 いや、ちょっとしたリフぐらいですね。それをせーので鳴らして、次の展開をスタジオで考えていく流れです。

西谷 ただ、そのリフが最初は全然理解できないんですよ。

今井 細かすぎて、すぐ飲み込めないっていう。

西谷 だから、リズムをつけてみて「なるほど! こうなってるのか」と理解することも多いし。

-- 『suite』以降、かなり早い段階から制作を意識してたという話もありましたけど、作品としては新作まで空くことになりました。

西谷 意識としては向かってたんですけど、いかんせん曲作りのペースが遅いのもあり、基本的にライヴが好きなんで、ライヴばっかりやるようにもなってて。

三希 (ライヴを)入れちゃうんですよね(笑)。

今井 実際、最初のころは半年かけて1曲みたいな。

-- 制作が進まないことに関して、フラストレーションが溜まるようなことはなく?

三希 もしかしたら、鐵太郎が一番あったのかも。

松村 たしかにそういったモノもありましたけど、そこでライヴのペースを落としたとしても上手いこと作れるわけでもなかったと思うんですよね。

-- それによって、バンド自体のバランスが崩れるかもしれませんし。

三希 実際、ライヴを減らそうという時期もあったりはしたんです。でも、誰かに誘われると全員が「やろう!」としか答えなくて(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

-- そこで歯止めをかけるメンバーはいないんですか?

西谷 それがいないんですよね(笑)。

-- そういったことを考えると、声をかけてくれたラリーさんとの出会いは大きかったですね。

西谷 いや、ホントにそうなんです。

LARRY そう言ってもらえるとありがたいですね。 ここ数年で自分的に忙しくなったし、PIZZAも慌ただしくなったしでミリタリーだけではなく周りも少しこのプロジェクトに関しては停滞気味だったかなと思います。 で、今年入ってかな「とりあえず録ってます」の連絡があって。 いやいや、ちょっと待ってよと(笑)。 なので、積極的に関わりだしたのは全体の音作りからになりました。 そこからここまでは早かったと思います。

-- 『suite』をリリースされたころもそうですけど、10年ごろからシャウトがあるような激しい音楽も市民権を得るようになりましたよね。お客さんも素直に楽しむことも増えてきて、バンドとしてそういったシーンへ飛び込むべきといった焦りはなかったんですか?

西谷 まったく無いと言ったらウソになるんですけど、そこに固執してたわけではないですかね、僕の場合は。まあ、みんなもそうなんだろうけど。

今井 うん、そうっすね。

-- 自分たちの音楽がより届くようなムードを感じたりは?

松村 そうは感じなかったですね。

西谷 これは僕だけかもしれないんですけど、ウチのバンドがやってることは中途半端なのかもと思った時期はありました。アンダーグラウンドな人たちは凄くアンダーグラウンドな音楽を、オーバーグラウンドな人たちはわかりやすくオーバーグラウンドな感じをやってて。僕らの作ってる曲って、どっちかだけにハマらないじゃないですか。

-- 両方の要素がありますからね。

西谷 言ってしまえば、アンダーグラウンドでエッジが凄く立ってるのが好きな人にとっては物足りなくて、キラキラしてるのが好きな人にとってはとっつきにくさもあるんじゃないかと。結果、どっちかに振り切る必要はないし、僕たちがやりたいことをやれてるからいいじゃないかという答えには辿り着いたんですけどね。この4人で作ってる音楽が凄く好きだし、それは評価されてナンボなのかもしれないけど、まずは自分たち自身がめちゃくちゃいい音楽だと感じられることが第一かなと。

-- 周囲の流れや雰囲気を意識しすぎると、マイナスに作用することもあるでしょうし。そうなると、この新作は『suite』を経て、またスタートの1枚のようなところも?

西谷 あると思います。内容自体は繋がってる部分もありますが、『suite』以後、(松村は)物凄く他の音楽を勉強して、掘ったり吸収したのもあって、曲の作り込みとかは結構変わってますしね。他の3人はそこまで変わってないんですけど、松村の引き出しが広がったのはこの新作には凄く影響してるかなと。ギターのプレイも全然違いますから。

-- ここ5年ぐらいの集大成とも言えるような。

西谷 なんだかんだ、集大成な感じになってるかな。

-- ラリーさんと出会い、本格的に新作を意識したとき、何かイメージした作品像はありましたか?

西谷 全体としてはそんなになかったですね。1曲1曲をしっかりと固めて、あとで歌詞や『suite』からの流れや曲同士の繋がりでまとめようと考えてたので。

三希 作品としては、最終的に西谷にまとめてもらったみたいな。

-- 1曲1曲を積み重ねていく中で、新作をしっかりと見据えると制作のペースも上がりましたか?

西谷 それは曲によってでしたね。できるスピードが全然違うんですよ。凄く時間がかかった曲もあれば、あっという間にできた曲もあるし。

今井 「誰がために鐘は鳴る」なんか、1回のスタジオである程度は完成したり。

西谷 そこからそれぞれが肉付けする作業はありましたけど、ホントにスムーズでしたね。

-- 逆にいちばん難産だった曲は?

西谷 収録した中だと「拘束された自由」かな。

今井 1年ぐらいかかったと思います。

西谷 この曲って、同じフレーズを繰り返すことがないんですよ。頭から全部展開が変わってて。

-- 「拘束された自由」に限らずですけど、1曲の中でかなり複雑な展開や緩急の付け方をしますよね。あれは最初からそういった構想があるんですか?

今井 いや、ないですね。

西谷 ないからこそ、ああいう感じになっていくんですよ。僕がイントロから作り出さないとイメージが膨らまないのもあって、ウチのバンドは頭から順番に作っていくんですけど、ひと段落したら「この後はどうしようか?」とみんなで試行錯誤して、「こうしよう」とか「ああしてみよう」と繋げていく。その結果、全部のフレーズが違って完成したのが「拘束された自由」という。まあ、途中で戻れなくなっちゃったというのもあるんですけど(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

三希 ウチらって、基本的に戻り方がわからないんです(笑)。

LARRY GARLICBOYSとは対局ですね。うちは基本的にシンプルなんで。 シンプルすぎて何回目を演奏してるかわからなくなることがありますが(笑)。

-- イントロからAメロ、Bメロ、サビみたいな、オーソドックスな展開で作ることはないんですか?

三希 何回もチャレンジしてるんですけど……できない(笑)。だから、最初のうちは「どこまでがイントロなの?」とか「Bメロはどこ?」みたいに、みんなの認識がちょっとずつ違ったりもするんです。

-- それも凄い話ですけど、曲の締めはどういった感覚で決めるんですか?

西谷 だいたい、鐵太郎と今井が終わりに向けて組み立て始めると、自然とそっちへ向かったり。あとは、曲の長さを計って、あまりにも長い場合は削れるところを削って、改めてまとめ方を意識したりもしますね。

-- また、ヴォーカルのアプローチも様々ですけど、どの段階で決めるんですか?

西谷 曲を作ってる最中は、基本的に今井と鐵太郎の2人で構築していくんですが、僕はそれをずっと聴きながらどういったヴォーカルがいいのかイメージしてる感じですね。ここはクリーンで歌って、次はシャウトにして、とか。で、なんとなく形になったらそこに三希も加わって、しっかりとした組み立てをするんですけど、そこで具体的に詰めていくような流れ。ただ、次のスタジオになったとき、「あの部分は忘れてください」と今井や鐵太郎から言われることもあるから、組み立て直すこともあったり(笑)。

-- 例えば、松村さんと今井さんで曲を構築してる段階ではヴォーカルをイメージすることはないんですか?

松村 イメージとしてはあったりもしますね。

西谷 えっ、それは言ってよ(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

松村 でも、曲が完成したとき、私がイメージしたヴォーカルとは毎回異なっていて、いいモノができてるんです。だから、そこは閃きが違うことを受け入れるというか。口を挟むのは止めて、信頼して任せる部分なのかなと考えてるんですよね。

-- 西谷さんがヴォーカルのアプローチを考える際、何か判断基準はあります?

西谷 そこは感覚でしかないですね。曲がどんどん出来上がっていく様をずっと側で感じて、そこで湧き上がるモノを形にしてるだけなんです。まあ、「このサウンドにヴォーカルを乗せるのか……」とか「無茶言うなよ」と感じたりもしますけどね(笑)。

Vol.03へ続く
Interview By ヤコウリュウジ

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Interview Vol.01

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-- 久しぶりとなる新作が完成したわけですが、今のバンドのムードはいかがですか?

西谷直登(Vo.) 長い時間がかかりましたけど、僕らなりのペースで作品へ向けてずっとやってきたのもあって、達成感はありつつ、ようやく世に出せるという安心感もあったり。ROTTEN ORANGEからリリースできることも含めて、いろんな感情が入り混じってますね。

今井貴宏(Dr.) 僕はまだそんなに実感がないんです。1stフルアルバム『suite』から考えると5年半ぐらい経ってるのもあり、出さなさすぎて(リリースするという感覚が)わかんなくなりました(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

-- リリースがない期間、バンドとしては何かしらの作品を出したいという気持ちはあったのでしょうか?

西谷 ありましたね。ただ、本格的に気持ちが向いたのはラリーさんから「一緒にモノ作りをしないか?」という話を頂いてからでした。それが5年ほど前になります。持ち曲がほぼほぼ無い状態から始めて、ようやく辿り着いたという。

-- そうなると、水面下ではずっと動いていたと。

西谷 そうなんですよ。もちろん、最初はそこまで具体的な話ではなかったんですが、僕らとしても作品は出したいと思っていたし、新曲を作っていこうと。

三希(Ba.) ただ、ウチらは曲作りにすっごく時間がかかるんです。

-- この新作に収録された曲もそうですけど、かなり複雑な曲構成ですしね。

三希 でも、へんな焦りはなくて。自分たちのペースで曲を作って、今に至るような気はしてます。

西谷 ラリーさんからも「自分たちのペースでやってくれ」と言って頂いていたし。そこが甘えになった部分もあるのかもしれないですけど、スピード感を重視するよりも、メンバー4人がしっかり納得できるモノを作りたかったんですよね。

三希 とは言え、「こんなに時間がかかってもいいのかな?」と思う時期はありました。

-- 制作をしてる間、誰かが引っ張ったり、焦るメンバーを誰かが抑えるようなこともなく?

西谷 そのへんに関しては、いい意味でみんなマイペースなんですよ。

三希 お互いの性格もよく知ってるから、そういったことを言い出すと(バンドが)良くない方向へ進むこともわかるし。

西谷 この中だと、僕が一番セカセカするタイプですが、それがバンドに伝わってもダメだし、自分たちなりのペースで制作を進めて良いモノを作っていく期間でした。

-- そもそもなんですが、ROTTEN ORANGEからリリースすることになった経緯を教えていただけますか?

西谷 僕ら、東京・立川を拠点に活動してるんですけど、そこに立川BABELというライヴハウスがありまして、12年2月にGARLICBOYSと共演させて頂いたんです。そのときはご挨拶をさせて頂いたぐらいで、特に濃い進展っていうのはそんなになくてですね。その後、12年9月に僕らが仙台MACANAへライヴで行ったとき、たまたまGARLICBOYSの再録ベストツアー・リターンズと一緒になることができまして。ラリーさんにもしっかりライヴを観ていただき、一緒にやろうと声をかけて頂いたんです。

-- 展開としてはかなり早かったんですね。

西谷 そうだったんですよ。だから、最初は理解不能なところもあって(笑)。

三希 BABELからMACANAがそんなに空いたわけでもなかったし、タイミングも凄く良かったのかなと思います。

LARRY なぜBABELではなくMACANA のだったかというとですね、MACANAでmilitarysniperpinfall のライブをゆっくり観ることができたっていうのがありまして。ただそれだけです。 曲は勿論ですが三希ちゃんがこの変拍子を含めた変則な曲を楽しそうに弾いてるのが印象的で。 大体においてこの手のパフォーマンスはしかめつらという勝手なイメージがあったもんで(笑)。 その後打ち上げに行ったのかな?その時に声をかけました。

-- ちなみに、GARLICBOYSに対して、どんなイメージを持たれてましたか?

西谷 僕らとしては完全に聴いてきた世代なんで、いわゆるテレビや雑誌の向こう側のような人たちだと思ってました。もちろん、影響も受けてますし、GARLICBOYSは日本の宝だと感じてるし。

松村鐵太郎(G.) 私も16歳か17歳のときに友達の兄貴の影響で聴いてましたね。

今井 僕も一緒です。

三希 私は(共演したときが)初めてでした。

-- フラットな目線で観たGARLICBOYSはどうでした?

三希 凄いのひと言というか。個人的な話になるんですけど、私はずっと音楽をずっと続けていきたいと考えてるんです。何かがあったから辞めるようなことはしたくなくて。GARLICBOYSのライヴを観たとき、ずっと続けてきたからこそのモノを感じたし、私が目指してる世界がそこにあったというか。もう感動しかなくて。

-- やっぱり、にじみ出ますよね、積み重ねてきたモノは。しかし、昔から聴いてきたバンドのメンバーから声をかけてもらうというのは、嬉しいのは当然として、不思議な感覚もあるでしょうね。

西谷 自分の携帯にラリーさんの連絡先が入ってること自体、よくわからない状態でしたから(笑)。

-- リリースに至る経緯をお聞きすると、西谷さんが「いろんな感情が入り混じってる」とお話された意味がよくわかります。

西谷 充実してるけど、まだ信じられない感じもありますし。それに、これからがまた大変というか。ワクワクしつつも、自分たちがどこまでやっていけるのか。そういったプレッシャーもある。ただ、全部を引っくるめれば、楽しみばかりなんですけどね。

-- では、このタイミングで初めて出会う人もいるでしょうし、バンドの始まりからお聞きさせていただきます。04年に結成という情報も目にしたんですが、10周年を記念したライヴを今年7月に行うこともありますし、正式な結成は08年になるんでしょうか?

西谷 物凄く厳密に言えば、結成は相当昔になるんです。もともとは僕と三希が始めたんですけど、音楽性も今とは全然違いましたし。

-- それが04年になるんですか?

三希 もう、昔すぎて憶えてないです(笑)。

西谷 でも……02年ぐらいになるのかな、それは。ただ、メンバーもなかなか見つからないし、いわゆるバンド活動ができてない状態。メンバーを探しつつ、スタジオにこもって曲を作ってたぐらいでした。そんな中、知り合いの繋がりで今井くんが入ってくれて。その後、しばらくサポートギターで活動してたんですけど、SNSを通じて(松村)鐵太郎と出会い、「一緒にやりたいです」と言ってくれて。

-- そこで今の体制に?

西谷 いや、当時は僕以外にもうひとりヴォーカルがいたんです。ツイン・ヴォーカルで、メンバーも5人。06年か07年ぐらいの時期ですね。音楽的にも今とは違って。当時はインディーズ・シーンでもミクスチャーロックが全盛期で、リンプ・ビズキットとかが凄く盛り上がってたし、僕らもそこに乗っかろうとしてたんですけど……パンクやメタルも好きだったし、ある程度の疑問を抱えながらやってるところがあったんです。そんな時、もうひとりのヴォーカルが「30歳になってバンドがいい状況じゃなかったら足を洗う」と言い出して。まあ、よくある話ですよね。で、それが08年ぐらい。その彼が抜けて、バンドとしてもこの4人になり、音楽性も新たに出発したという。

-- バンド名は変わってないんですよね。

西谷 そうですね。ただ、それまではMILITARY SNIPER PINFALLと大文字で3ワードだったのをmilitarysniperpinfallと小文字で1ワードにはしました。屋号を簡単に変えるのは良くないみたいな信念もあり、表記だけ少し変更したんです。

-- この4人になって音楽性を変えた大きな理由は?

西谷 僕はそれまでの音楽性に疑問も抱えつつでしたし。ミクスチャーやラップコアは好きだったけど、ラップが上手くできてたわけでもなく。どうなのかなっていう気持ちがあって。聞くのとプレイするのはまた別かなと。

-- 他のみなさんの心境としては?

三希 疑問を抱えてたというわけでもないんでしょうけど、なんとなく音楽的に興味があるとこが少しずつ変わりつつあるのかなという時期ではあったと思います。4人になって、スタジオで合わせてるときにバンドを引っ張ってたのが西谷と松村だったんですけど、2人の方向性も割と似てたというか。

西谷 そうっすね。今井と松村が加入する前は、僕がガンガン曲を作って、それに対して他のメンバーが合わせてくれる流れだったんです。そこが4人になったとき、松村がアイデアをバンドに持ち込んでくれて、それを元に4人で音楽を作るようになった。だから、自然と変わっていったようなところもあって。

三希 (バンドに)鐵太郎節が出てきたころですね。

-- それまで、松村さんはバンドにアイデアを持ち込むようなことはなかったんですか?

松村 と言うよりも、ライヴをやり続けてる中で、徐々にスキルアップというか、ギターとしてアプローチできることが増えてきたんですよ。で、「じゃあ、こういうこともできるのかな?」みたいな提案をメンバーにしたら、それが形になっていってたような感じだったんです。

西谷 それが今にも繋がってますね。ウチのバンドは鐵太郎が作曲の柱なんで。

-- せっかくの機会なのでお聞きしますが、みなさんのルーツはどのあたりになりますか?

西谷 兄貴の影響で爆風スランプやBOOWYといった日本のロックバンドを聴いていたんですけど、音楽に目覚めたのは高校生になってからでした。友達にオールディーズのCDを聴かせてもらって、そこからザ・ビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、エアロ・スミス、ガンズ・アンド・ローゼズといったバンドを吸収していって、辿り着いたのがヘヴィメタル。高校を卒業するころにはほぼほぼメタラーになってまして。「どの時代からやってきたんだ!?」みたいな格好をしてました(笑)。

三希 私が知り合ったのはそのころなので、当時の写真をお見せしたいですね(笑)。

西谷 そこから専門学校へ進学したんですが、そこで知り合った友達から日本のパンク・シーンや洋楽のオルタナを教えてもらい、それまで知らなかった音楽が一気に入ってきた時期。邦楽ならGARLICBOYS、ヌンチャクやCOCOBAT、洋楽ならレッド・ホット・チリ・ペッパーズやニルヴァーナ。専門学校の2年間は学業としてはそれほどでもなかったんですけど(笑)、音楽的には開けた時代。乾いたスポンジ状態だったんで、自分でもどんどん音楽を掘るようになったし、バンドをもっとやっていきたいと考えるようにもなった。あの時期に今の自分の原型が作られたような感じですね。

-- シャウトやクリーン・ヴォーカルを使い分ける西谷さんのスタイルは、そういったいろんな音楽を通ってきたからこそなんでしょうかね。

西谷 自分ではそこまで意識してるわけじゃなんですけど、それもあるかもしれないですね。ただ、ウチはコーラスする人がいないから、全部を自分がやらなきゃいけない(笑)。

一同 ハハハハ(笑)。

西谷 あと、飽き性っていうのもあると思うんですよ。例えば、最初から最後までがなってる曲もありますけど、それが何曲も続くとしたら歌っててもつまらなくなっちゃうんです。

-- その飽き性っていうのは、他のみなさんにも共通します?

西谷 みんな飽き性ですよ。

三希 曲作りをしてても、すぐに次の展開へいきたくなりますから(笑)。

-- では、今井さんのルーツはどのあたりですか?

今井 最初は普通にJ-POPとかだったんですど、中学の途中からGARLICBOYSをはじめとする日本のインディーズ・バンドを聴くようになりまして。高校に入ると、ちょうど流行ってたコーンらへんも聴くようになり、その後はスラッシュメタルをめっちゃ好きになったんです。今はそういったところは継続しつつ、いろいろ聴きますね。最近っていうわけでもないけど、60年代や70年代のロックバンドも結構聴くようになりましたし。

-- そして、作曲の軸も担う松村さんは?

松村 私はメロコアやパンクといった日本のインディーズから聴き始めて、そこから海外の初期パン、ラモーンズとかにいって、コーンやデフトーンズも聴くようになりました。まあ、今は何でも聴きますね。

-- 最近、特にお気に入りになったモノはありますか?

松村 フライング・ロータスですね。海外のヒップホップなんですけど、凄く刺さりました。

西谷 彼はメンバーの中でいちばん音楽を知ってるんですよ。

三希 普段から凄く見つけてきますね。

-- いろんな音楽を掘るのは個人的な趣味として? それとも、制作への刺激を求めてるようなところも?

松村 結果的にリサーチとなり、制作のイメージが膨らむことはありますけど、聴き始めは個人的な趣味ですね。

-- 三希さんはどういった音楽を聴いてきましたか?

三希 私はJ-POPから入り、マルコシアス・バンプやTHE YELLOW MONKEYのような日本のグラムロックをわりかし長い時期好きでしたし、筋肉少女帯や人間椅子を聴きながらフフフと笑ってるタイプでしたね(笑)。そのころだと、岡村靖幸さんも聴いてたし。だから、この4人の中だと、みんながいちばん触れてない部分を私は聴いてたのかもしれないです。

-- 意外と邦楽畑を歩んできたような。

三希 そうでしたね。そこから、THE YELLOW MONKEYやすかんちが影響された音楽も気になるようになり、クイーンやエアロ・スミスとかを調べて聴くようにもなりました。ただ、私は広く浅くなんですよね。その時代の流行ってる音楽も耳に入ってくるけど、そこまでハマることもない。イントロを聴けば知ってたりするけど、曲名を言われても全然わからないこともあったりして。

-- オーソドックスな部分では重なるところもあるんでしょうが、4人とも方向性がバラバラですね。

西谷 そうなんですよね。例えば、思い入れのある曲をカバーしようしても、まずまとまらないだろうし。

三希 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは?

西谷 あっ、唯一挙げるとするならばそこになるかな。でも、ホントにそこぐらいで。まあ、みんなバラバラなんですよ(笑)。

Vol.02へ続く
Interview By ヤコウリュウジ

  • Vol.2  

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